当時のADは、会社に寝泊まりが普通だった。
なぜ寝泊まりするかって?
単純に終電までに仕事が終わらないからだよ。
たしかに要領の良し悪しもあると思うし、
私はそんなに要領が良いほうではなかっだけど、
どんなに仕事ができるADでもかなりの確率で会社に泊まっていた。
作業内容は、スタジオ収録の前日とかだとカンペや小道具の準備。
ロケの前日はロケスケや台本や道具、機材の準備などなど。
そして、ロケの終わった後はデジタイズ(収録テープをデータ化する)や、
そのデジタイズした映像のキャプション(喋ってる内容の文字越こし)など。
あとは使えそうな映像の「抜き」を作ったりもする。
とりあえず午前2時くらいまでキャプション取るのを頑張っていたとしても、
さすがに疲れ眠気が襲ってくる。
「ちょっと仮眠するかぁ~」と思って
椅子を並べて転がったりなんかしていると、
まるで見計らったかのように、社内の固定電話が鳴り始める。
「こんな時間に!?」と思いながらも、
同じく泊まっていた同期たちと顔を見合わせながら電話を取る。

はい、〇〇会社のおたけです。
D「おう、俺だ。お前まだ会社にいたか。この時間まで居るってことは、
もうどうせ帰れないよな?」

え?あ。はい。そうです・・ね・・。
もはや、嫌な予感しかしない。
D「今、会社近くの〇〇って店で飲んでるからすぐ来い」

え!?いや、明日までに終わらせないといけない仕事が・・(だから泊まってるんですが・・・)
D「飲んでから会社帰ってやりゃあいいだろ!あと社内に誰残ってるんだ?」
このとき、私は悟っていた。
ここで名前を出すと、その人たちも道連れになってしまうだろうということを。
私の雰囲気から、みんなもだいたいの内容を察していて、
みんな私のほうを見て首を横に振っている。
「頼むから、名前出さないで!」
そんな声が、ひしひしと伝わってくる表情をしているが、
私もそんなに優しくないのだ。
作業が残っているのはみんな一緒。
私だってそう。
なのに、私ひとりだけが犠牲になるなんて、不公平。

あ~、あとは、同期の〇〇と〇〇、〇〇、あと〇〇さんですね←先輩も巻き込む
みんなの「こいつ!やりやがったな!」という顔。
先輩の「え、まさか俺の名前も出した!?」という顔。
いやぁ、愉快、愉快。
D「よし全員連れてこい。5分以内に来いよ!
あとマルボロ買ってきて。あとで払うから。」
ガチャン!!
切られる電話。
マルボロの何mmだよ。

・・・ってことで、とりあえず、5分以内にいきますよみなさん
「てめぇ売りやがったな・・・!」
という視線を感じつつ
みんなを引き連れ居酒屋に向かうという深夜の出来事。
そう、だいたい深夜にかかってくる社内電話は、
飲んだくれてる先輩たちが後輩を呼ぶのによく使われていた。
今じゃ確実に訴えられるね。
でも、確かに無理矢理呼ばれて飲まされるけど、
だいたいは奢ってはくれるし
よくもわるくも体育会系だった。面倒見はいい。
今の時代じゃなかなかそういうのもできないし、
まず若い子がほんとうにお酒を飲まなくなった。
そう考えると、
少し寂しい気がするかね。
こんな生活に戻りたいとは思わないけど、
古き良き時代の上司たちだな、っていうのは感じたな。
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